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公開:2026.05.20 11:00 | 更新: 2026.05.20 01:39

「インシデントは現場で起きている。だが、現場に行く必要はない」―EDRのリモート調査・対応機能とは?

セキュリティブログ:インシデントは現場で起きている。だが、現場に行く必要はない――EDRのリモート調査・対応機能とは?セキュリティブログ:インシデントは現場で起きている。だが、現場に行く必要はない――EDRのリモート調査・対応機能とは?

はじめに

「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」
この有名なセリフは、かつて探偵業に携わっていた私にとって、まさに座右の銘でした。
証拠をつかむためには、現場に足を運び、張り込みや尾行、聞き込みを重ねる必要がありました。
それが、当時の私にとっての常識でした。

はじめまして。

株式会社セキュアイノベーションでSOCアナリストを務めております。
私は探偵業界からサイバーセキュリティ業界へ転身と、少し異色のキャリアを歩んでいます。

そんな私がサイバーセキュリティの世界に足を踏み入れて衝撃を受けたのは、「インシデントが発生しても、物理的な現場へ赴く必要はない」ということでした。

もちろん、物理的な現場に行く必要性が完全にゼロになったわけではありません。
しかし、現在起きているインシデントの多くは、画面の前から一歩も動かずに調査・対応を進めることができます。

本記事では、探偵時代の経験も交えながら、現代のサイバーセキュリティにおいて重要な役割を担う「EDRのリモート調査・対応機能」について解説します。

INDEX

はじめに

そもそもEDRとは何か?

なぜEDRのリモート調査・対応機能が必要なのか

EDRの「ネットワーク隔離」と「リモート調査」を組み合わせるメリット

現場でよくあるリモート調査・対応機能のユースケース

「EDRのリモート調査・対応機能」と「フォレンジック」の違い

まとめ
関連サービスの紹介

そもそもEDRとは何か?

「EDR」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。

EDRは Endpoint Detection and Response の略で、日本語では「エンドポイントにおける検知と対応」と訳されます。

ここでいう「エンドポイント」とは、私たちが日常業務で使用するPCやサーバーなどの端末を指します。

近年、サイバー攻撃の高度化に伴い、従来のシグネチャベースのアンチウイルスでは検知が難しい事例が増えています。特に、以下のような攻撃手法が大きな脅威となっています。

  • 未知のマルウェア:まだシグネチャが作成されていない新種のマルウェア
  • ファイルレス攻撃:実体のあるファイルを使わず、OSの標準機能などを悪用してメモリ上で実行される攻撃

従来のアンチウイルスソフトが「ウイルスの侵入を防ぐための水際対策」であるのに対し、EDRは「侵入されることを前提に、侵入後の挙動を検知し、被害を最小限に抑える」ことに特化しています。

現在では多くの企業で導入が進んでおり、SOCアナリストが日々活用している代表的な製品として、以下のようなものがあります。

  • CrowdStrike:Falcon Insight
  • Microsoft:Microsoft Defender for Endpoint
  • Cybereason:Cybereason EDR

これらの主要なEDR製品には、検知機能だけでなく、今回ご紹介する「リモート調査・対応機能」も標準的に備わっています。

製品によって「Real Time Response(リアルタイムレスポンス)」や「ライブ応答」など名称の違いはありますが、いずれもSOCアナリストが端末の調査や初動対応を迅速に行うための、非常に重要な共通機能です。

なぜEDRのリモート調査・対応機能が必要なのか

私が携わっていた探偵の仕事は、とにかく「移動時間」の多い仕事でした。
調査依頼が入れば、空港や駅へ向かい、現場へ移動する。
それが私の日常でした。

ただ、その移動時間は、私にとって常に大きなもどかしさでもありました。
移動中は、刻一刻と変化する状況を思い描きながらも、到着を待つことしかできませんでした。

サイバーセキュリティの世界では、この「移動にかかる時間」の遅れが、致命的な差につながります。

その間にも、攻撃者は痕跡を消し、マルウェアは内部で拡散し、被害は静かに広がっていくかもしれません。だからこそ、初動の数分、数十分が極めて重要になります。

現在の私は、飛行機や電車に乗る必要はありません。
沖縄にいながらでも、遠く離れた端末の状況を即座に確認し、調査を始めることができます。

物理的な移動時間をゼロにし、異常を検知したその瞬間に調査を開始できる。

これが、現代のインシデント対応において、リモート調査・対応機能が重要とされる大きな理由です。

リモート調査・対応機能が必要とされる主な理由

地理的制約を解消できる感染端末が遠方の拠点や在宅勤務者の手元にある場合でも、現地へ赴く時間を待たずに、即座に「デジタル上の現場」へアクセスできます。
初動対応を迅速化できる物理的な移動を介さず、ネットワーク越しに直接端末を操作することで、被害が拡大する前に攻撃の連鎖を断ち切ることが可能になります。
証拠保全と分析に役立つ現場に到着してからでは消えてしまうような、メモリ上の実行プロセスや一時ファイルなどの動的な痕跡を、発生直後にリモートで確保できる利点があります。

具体的には、遠隔から次のような操作が可能です。

  1. ファイル操作:不審なファイルの直接取得や削除
  2. プロセス制御:悪意あるプロセスの強制終了
  3. 痕跡調査:レジストリやサービス、自動実行設定の確認
  4. ログ収集:詳細分析に必要なログの取得

このように、リモート調査・対応機能を活用することで、物理的な距離に縛られない「スピード感のある初動対応」を実現することができます。

EDRの「ネットワーク隔離」と「リモート調査」を組み合わせるメリット

多くのEDR製品には、感染や不審な挙動が確認された端末を、他の端末やサーバーから論理的に切り離す「ネットワーク隔離」機能が備わっています。
これにより、被害の拡大を防ぎながら、管理用通信のみを維持することが可能になります。
リモート調査機能と組み合わせることで、安全な状態で調査を継続できる点が大きな利点です。

かつて探偵の仕事をしていた頃、私が最も恐れていたものの一つが「証拠の消失」でした。
一度失われた手がかりは、多くの場合、二度と戻りません。

一方、サイバーセキュリティの世界では、証拠が失われるだけでは済みません。
対応が数分遅れるだけで、証拠が消えるだけでなく、被害そのものが拡大していく可能性があります。

1台のPCの感染が、やがてサーバー停止や組織全体のデータ暗号化、さらには顧客情報の漏えいへとつながることもあります。

証拠の消失と被害の拡大が、同時に、そして加速度的に進んでいく。
これこそが、サイバーインシデントの恐ろしさです。

こうした被害の連鎖を断ち切りながら、同時に調査を継続するために、ネットワーク隔離とリモート調査の組み合わせは、インシデント対応における極めて重要な手段となります。

具体的には、次の2つの利点があります。

(1)二次被害を防ぎながら調査を継続できる

対象端末を組織内ネットワークから論理的に切り離しつつ、EDRの管理基盤との通信のみを維持できる点は、大きな強みです。
これにより、攻撃者による外部への情報送信や他端末への感染拡大を防ぎながら、遠隔で安全に調査を継続できます。

かつては、不審な挙動が確認された端末に対して、LANケーブルを抜くなどして物理的にネットワークから切り離す対応が一般的でした。状況によっては電源を落とすこともありましたが、その場合、メモリ上の痕跡が失われる可能性もあります。

EDRを活用すれば、端末を稼働させたまま隔離し、状況確認と初動対応を並行して進めることが可能です。

(2)業務への影響を最小限に抑えられる

従来のように、不審な端末を物理的に回収し、数日間使用できない状態にするといった対応は、現代の業務環境では大きな負担になりかねません。

その点、論理的な隔離であれば、必要な調査や確認を終えた後、状況に応じて速やかに隔離を解除し、通常業務に復帰させるといった柔軟な対応が可能です。

セキュリティを確保しながら、業務影響を最小限に抑えられることは、実運用上きわめて重要です。

このように、「ネットワーク隔離」によって被害拡大を防ぎつつ、「リモート調査」によって状況確認と対応を継続できることこそが、EDRの真価です。

そしてそれは、現代のインシデント対応における大きなメリットといえます。

現場でよくあるリモート調査・対応機能のユースケース

EDRのリモート調査・対応機能は、実際のインシデント対応では非常に重要な役割を果たします。
特に、「端末の状況をすぐに確認したいが、現地に行けない」「被害拡大を防ぎながら、その場で初動対応したい」といった場面で、その価値が大きく表れます。
ここでは、現場でよくある代表的な利用シーンを紹介します。

(1)ランサムウェア感染が疑われる端末の初動対応

ランサムウェア感染が疑われる場合、初動対応で重要になるのは、まず被害拡大を防ぎ、その後速やかに端末の状況を把握することです。
そのため、一般的には、対象端末をネットワークから隔離して封じ込めを行ったうえで、感染の有無や影響範囲を調査します。
EDRのリモート調査・対応機能を使えば、こうした流れを現地に行かずに進めやすくなります。
対象端末を隔離したまま、実行中のプロセスや不審なファイルの有無、永続化の痕跡などを遠隔から確認できるほか、必要に応じて不審なプロセスの停止や、関連ログ・ファイルの回収も行えます。
これにより、被害拡大の防止と状況把握を両立しながら、初動対応を迅速に進められます。

(2)不審なPowerShell実行に関する調査

近年の攻撃では、LotL攻撃(※)が多く確認されています。
このような攻撃は、新たなマルウェアファイルを端末上に保存せずに不正な処理が実行されることもあり、従来型の対策だけでは不審な挙動を見分けにくい場合があります。
EDRがPowerShellの不審な実行を検知した場合、リモートで当該端末に接続し、親子プロセスの関係、実行ユーザー、関連ファイル、外部通信の接続先、スケジュールタスクやレジストリの設定などを調査できます。
これにより、それが正当な管理者作業なのか、それとも攻撃者による不正な実行なのかを早い段階で切り分けやすくなります。
LotL攻撃(Living off the Land):PowerShellや各種コマンドラインツールなど、OSに標準搭載された正規ツールを悪用して攻撃を行う手法。

(3)C2通信が疑われる端末の封じ込め

C2通信(※)が疑われる場合は、端末を速やかに封じ込めることが重要です。
このようなケースでは、EDRのネットワーク隔離機能によって端末を組織ネットワークから切り離しつつ、管理用通信だけを維持し、遠隔から通信関連のプロセスや接続先情報を確認できます。
これにより、攻撃者による追加操作や横展開を防ぎながら、端末を停止させずに状況を把握できます。

※C2通信:攻撃者が外部のサーバーを通じて、侵害した端末へ指示を送ったり情報を受信したりするための通信。

このように、EDRのリモート調査・対応機能は、単に「遠隔で端末を操作できる」だけのものではありません。
初動対応、封じ込め、証跡確認までを一連の流れで支える実務的な機能として活用されています。

「EDRのリモート調査・対応機能」と「フォレンジック」の違い

ここまで、EDRのリモート調査・対応機能が、インシデント対応の初動において有効であることを説明してきました。
一方で、インシデント調査という文脈では、「フォレンジック」との違いが分かりにくいと感じる方もいるかもしれません。
フォレンジックとは、インシデント発生後に証拠を適切に保全しながら、侵害の原因や影響範囲を詳細に解明するための調査手法です。
EDRのリモート調査・対応機能とフォレンジックは、どちらもインシデント調査に関わりますが、重視するポイントや活用される場面は異なります。
端的に言えば、EDRは「今起きていることに対処するためのもの」、フォレンジックは「何が起きたかを正確に解明するためのもの」です。

以下では、それぞれの特徴を具体的に見ていきます。

(1)EDRは初動対応に強い

EDRのリモート調査・対応機能は、主にインシデント発生直後の初動対応を支えるためのものです。
たとえば、「何が起きているのか」「現在も不審なプロセスが動いているのか」「端末を直ちに隔離すべきか」といった判断に必要な情報を短時間で収集できます。
また、端末を稼働させたまま調査を進められる点も大きな特徴です。
プロセス、ネットワーク接続、ログ、ファイル、永続化設定などを遠隔から確認できるため、現在進行中の不審な挙動や、再起動によって失われる可能性のある揮発性データを把握しやすくなります。
つまり、リモート調査・対応機能は、迅速な状況把握と封じ込めに強みがあります。

(2)フォレンジックは「証拠保全」と「原因究明」を重視する

一方、フォレンジックは、証拠を適切に保全しながら、侵害の全体像や原因、影響範囲をできるだけ正確に解明することを重視します。
法的対応、社内報告、再発防止、外部機関との連携が必要になる場面では、調査結果の正確性や再現性が特に重要になります。
そのため、フォレンジックでは単に調査を行うだけでなく、どのような手順で取得したか、証拠性をどのように担保するかといった観点も強く求められます。
厳密な証拠保全が必要な場合には、リモート調査・対応機能だけで完結させるのではなく、別途フォレンジック手順に基づいた対応が必要になります。

(3)両者は代替関係ではなく、補完関係にある

重要なのは、EDRのリモート調査・対応機能があればフォレンジックが不要になるわけではないという点です。
EDRのリモート調査・対応機能は、迅速な初動対応と封じ込めに適しており、フォレンジックは、その後の詳細調査、証拠保全、原因究明に適しています。
つまり両者は競合するものではなく、インシデント対応の異なるフェーズを支える補完関係にあるといえます。

まとめ

探偵時代の私にとって、「現場」とは実際に足を運ぶ場所でした。
しかし、サイバーセキュリティにおける現場は、画面の向こう側にある端末です。

EDRのリモート調査・対応機能を活用すれば、異常を検知した直後から、対象端末の状況確認、封じ込め、ログ収集といった初動対応を遠隔で行うことができます。
物理的な距離に左右されず、被害拡大を防ぎながら調査を進められることは、現代のインシデント対応における大きな強みです。

「インシデントは現場で起きている。だが、現場に行く必要はない」

それを可能にするのが、EDRのリモート調査・対応機能です。

関連サービスのご紹介

EDR:Microsoft Defender for Endpoint マネージドセキュリティサービス

Microsoft Defender for Endpointとは、エンドポイントに対する様々攻撃を検知・防御する旧来のアンチウイルス・EPP(Endpoint Protection Platform)としての役割はもちろん、OSと融合していることからシームレスに収集されるOS情報に基づく、行動解析やクラウドベースの解析能力、万一の復旧などを実現するオールインワンのソリューションです。当社ではセキュリティ専門SOCチームが安定した運用・監視等をサポートします。

SOC(セキュリティオペレーションセンター)サービス

関連サービス:SIV-SOCサービス

SIV-SOCサービス

SOCは、セキュリティ機器やログを監視し、インシデントの検知や対応を行う運用体制です。
MISPのような脅威インテリジェンスを活用する場合、SOCによるログ監視やインシデント対応と組み合わせることで、より実践的なセキュリティ運用が可能になります。

フォレンジック・スナッパー

セキュアイノベーション、新サービスリリース:フォレンジック・スナッパー

Forensic Snapper(フォレンジック・スナッパー)

エンドポイントに導入するだけで、インシデント発生前から証拠を自動取得し、初動対応を迅速かつ低コストで支援するサービスです。専門人材や高額な専用機器に依存することなく、平時からインシデント対応に備えた証拠保全体制を整備できます。

参考資料:

https://www.crowdstrike.com/tech-hub/endpoint-security/the-power-of-real-time-response/ (CrowdStrike)

https://learn.microsoft.com/ja-jp/defender-endpoint/live-response (Microsoft)

https://www.cybereason.co.jp/products/edr/ (Cybereason)

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