公開:2025.12.10 11:40 | 更新: 2025.12.10 02:43
年々、企業を取り巻くデジタル環境は、クラウド、SaaS、外部委託などの拡大によって複雑になっています。こうした変化が事業のスピードや利便性を大きく高める一方で、“どこが攻撃され得るのか” を見えにくくしているという側面もあります。
一方、このような状況は決してネガティブな要素だけではなく、むしろ企業にとってはサイバーリスクを「見える化」し、それを “経営リスク”として捉えてコントロールするチャンスが生まれているとも言えます。
その鍵となる仕組みのひとつが、ASM(Attack Surface Management) です。
ASM は、攻撃対象となり得る領域(攻撃面)を把握し、リスクの優先順位づけや対応をスムーズにすることで、診断・SOCなど既存の取り組みと組み合わせ、より強固なセキュリティ運用を実現するための基盤として機能します。
本記事では、サイバーリスクを “経営リスク” の視点に変換することで見えてくるASM の価値と役割について整理していきます。
はじめに
サイバー攻撃や情報漏えいのリスクは、今やIT部門だけの課題ではありません。
ひとたびインシデントが発生すると、会社の事業そのもの、法務対応、ブランド価値など、“経営が管理すべき領域”に直接影響を及ぼします。
実際、国内の複数企業でサプライチェーンを経由したサイバー攻撃により、製造ラインの停止や、システムの長期ダウンによって事業継続に深刻な影響が出た例も見受けられます。
このように、サイバーリスクとは技術的な脆弱性の話だけではなく、企業運営の根幹に関わる経営リスクそのものと捉えることができます。
具体的にサイバーリスクが経営に与える影響は、大きく以下の3つに分類できます。
事業運営そのものが止まる可能性があるリスクです。
事業が停止すれば、売上の機会損失だけでなく、復旧のための人件費や緊急対応による追加コストも発生します。特に現在は、クラウドやSaaSが業務の中心にある企業が多く、「知らない・把握されていない攻撃面」が原因で止まるケースが増えています。
これが経営が無視できない理由となり得ます。
情報漏えいや設定不備は、法令・契約・監査要件に影響する場合があります。
特に昨今は、委託先を含めたサプライチェーン全体の管理を求められることが増え、「自社の管理外にあるはずの領域」が原因で法的リスクが発生するケースも珍しくありません。
法務や監査は経営が責任を負う領域であるため、このリスクは経営課題と捉える必要があります。
サイバー事故は顧客・取引先からの信頼を一気に損なう可能性があります。
特に BtoB 企業では、「セキュリティ事故=信頼低下=ビジネス停止」という構図が強く、ブランド価値を直接揺るがします。一度失われた信頼は回復に長時間を要し、ここでも経営インパクトが極めて大きいことがわかります。
企業のデジタル環境が広がる中で、「どこが攻撃され得るのか」が把握しづらい状態が生まれています。その理由は、大きく次の3つに整理できます。
昨今、新しいSaaSやクラウド環境を手軽に導入できるため、IT 資産が“増える・変わる・消える”サイクルが非常に速くなっています。
その結果、更新のたびに攻撃対象が入れ替わり、把握しきれない資産が生まれやすくなります。
業務効率のため、各部門が IT 部門に相談せずSaaSを契約するケースも増えています。
こうした「シャドーIT」は利便性が高い一方で、誰も管理していない攻撃面をつくりやすい ことが課題です。
開発会社・運用委託・外部事業者など、企業の業務範囲は外部にも広がっています。
そのため、委託先の設定ミスや外部アカウントの権限も自社の攻撃面に含まれることになり、管理の難易度が上がっています。
攻撃面が広がり続ける今、企業に求められるのは「どこが攻撃されるのか」を把握してコントロールすることです。これを実現する仕組みが、ASM(Attack Surface Management:攻撃面管理) です。
ASM をひと言でまとめると、次のように説明できます。
ASM = “攻撃が成立する入口(攻撃面)を見える化し、管理する仕組み”
ASM は、従来の「外部公開サーバー」だけでなく、現代の企業に存在する様々な攻撃対象を可視化できます。
つまりASM は、“攻撃者が狙いやすい場所”をすべて洗い出し、把握するための土台と言えます。
診断(脆弱性診断)や SOC(監視)は重要な取り組みですが、対象とするレイヤーが異なります。
診断やSOCをより効果的にするためにも、「前提となる攻撃面を把握する」ことが必要 であり、ASMはその前工程として機能します。
ASM を導入することで、攻撃面という“見落としやすい経営リスク”をコントロール可能な状態に戻せます。
単なるセキュリティツールではなく、“経営リスク管理の一部”として位置づけられるのが ASM の特徴です。
ASM の導入によって得られるメリットは、「ITの強化」だけではありません。サイバーリスクを “経営リスク” として整理し、コントロール可能にすること に価値があります。
経営が判断しやすい形に落とし込むと、ASMは次の4つの価値を生み出します。
クラウド・SaaS・委託先などに散らばる攻撃対象を洗い出し、「何がどこにあるのか」「どこにリスクが潜んでいるのか」が明確になります。
これにより、
といった判断がしやすくなり、セキュリティ投資の“勘と経験”から脱却できます。
ASM は、発見したリスクを
などから整理し、対応優先度を提示できます。
これにより、「何から対策すべきか」が明確になり、リソースの少ない企業でも効果的にリスク削減が進められます。
攻撃面が把握できていれば、インシデント発生時に「原因となりえる場所」を素早く特定できます。
その結果
といったメリットが生まれます。これは “経営インパクトの最小化” に直結するポイントに繋がります。
近年は、企業自身だけでなく、委託先・外部パートナー・関連会社も含めたセキュリティ管理が求められるようになりました。
ASM があれば、
といった情報が整理され、監査・報告・委託先管理の基盤が整うため、ガバナンスの強化につながります。
ASM は単なるセキュリティ機能ではなく、経営にとって“投資対効果(ROI)が説明しやすいセキュリティ対策のひとつです。サイバー攻撃が高度化する中で、「何に対策費を投じるべきか」を判断するのは容易ではありません。しかし ASM は、投資判断の観点から見ると明確な価値があります。
サイバー事故のコストは種類が多く、金額も大きくなりがちです。
これらは、1回の事故で数千万〜数億に達することも少なくありません。
一方、ASMの導入は、その前提となる“攻撃の入口”を継続的に潰し続ける行為であり、
事故による損害を避ける効果的な投資と言えます。
ASMは診断やSOCの補完ではなく、それらを強く・効果的にする “基盤” です。
つまり、既存のセキュリティ投資の価値を最大化する役割を果たします。
経営視点では「既存投資の効率を上げる」ことは極めて重要です。
IT 資産が増えるほど、手作業の棚卸し・ログ確認・構成チェックは現実的ではなくなります。
ASM があれば、
が可能になるため、人手に依存した運用からの脱却が進み、結果として人的コストや運用コストの削減につながります。
近年は以下のような場面で“セキュリティ対策の説明”が求められます:
ASM を導入していると、
など、“説明できるセキュリティ” が実現でき、経営としての信頼性が高まります。
サイバーリスクを“経営リスク”として捉える視点を持つことで、攻撃面の複雑さを正しく扱えるようになります。
どこにリスクが潜んでいるのかを把握し、その変化を継続的に追いかけることができれば、サイバー事故による事業停止や信頼低下といった経営インパクトを未然にコントロールできるようになります。
ASMは、この「サイバーリスクを経営リスクに変換して捉える」ための要となる仕組みです。見えにくい攻撃面を透明化し、優先度を整理し、組織の意思決定を支える材料に変えていく。その結果、診断やSOCなど既存の取り組みとの相乗効果を高め、企業全体としてのセキュリティ運用が着実に強くなっていきます。
攻撃を完全に防ぐことはできなくても、攻撃が成立しにくい環境をつくり、経営リスクを自らの手で“コントロール可能なもの”へと変えていくことは可能です。
そのための一つの有効な手段としてASMがあり、今後ますます重要性が高まる領域といえます。
なお、当社でも ASM サービスを提供しており、企業の状況に合わせたご案内が可能です。もしご興味がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
これらのポイントをふまえて当社がサポートできる範囲として、当社のASMサービス「SIV-ASMサービス」をご案内いたします。
本サービスは以下の特徴がございます。
・単発(ワンショット)型と継続型の両プランを用意
・アジアで最もサイバー攻撃被害が多い国の1つである、台湾のサイバーセキュリティ企業が持つ脅威インテリジェンスを活用
・導入負担が少なく、専門家によるサポート付き
・ドメイン提供のみで手間が少ない
初めてASMを導入する企業にも適したサービスとなっておりますので、まずは単発プランで「自社の攻撃対象領域」を把握し、資産リスク管理の第一歩を踏み出すことをお勧めします。

SIV-ASMサービス
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